日本芝生文化大賞受賞コメント
第1回(平成20年) 日本芝生文化大賞は日本サッカー協会キャプテンの川淵三郎氏に授与されました。
日本芝生文化大賞 受賞者氏名 川淵三郎氏
【主な表彰理由】
日本の競技場はJリーグの発足によって芝生の常緑化が一挙に進み、造成管理技術の開発が誘発された。さらにFIFAワールドカップの開催により国民の芝生に対する関心が一層高まった。川淵氏はJリーグの設立に貢献して初代チェアマンに就任され、ワールドカップの誘致にも貢献して日本組織委員会副会長を務められ、競技場の芝生の品質向上を牽引された。
「地域社会に密着し、サッカーだけでなく地域のスポーツの振興を図るスポーツクラブを育てていく」との信念を持ち、Jリーグ百年構想やJFAキャプテンズミッションとしてJFAグリーンプロジェクトを実施するなどの方法によって、地域の施設の向上や校庭の芝生化に対する支援も強く推し進められた。いくつもの要職にあって国際的にも多忙に活躍される中、校庭芝生化に取り組む学校を気さくに訪れて児童に語りかける姿は芝生に対する社会の関心を高め、芝生に取り組む人々を勇気づけた。日本芝草学会はその功績を讃え、日本芝生文化大賞を贈ることを決定した。
【川淵三郎氏からの受賞コメント】
授賞式において、川淵三郎氏から以下のようなコメントを頂きました。
2008.6.12
日本芝生文化大賞 受賞コメント
財団法人 日本サッカー協会
キャプテン 川淵 三郎
この度は、栄誉ある賞をいただきましてありがとうございます。
本日こちらに出席し、この素晴らしい賞を賜りたかったのですが、2010年のワールドカップ出場を目指して、現在、日本代表が予選を戦っており、その最終予選進出に王手をかけた一戦が今日タイのバンコクで行われるため、急遽そちらに行くことになり、やむなく欠席せざるを得なくなりました。
現役時代、初めて訪れたドイツで、緑豊かな充実したスポーツ環境を目の当たりにした私は、「こんな素晴らしい環境があったらもっと大勢の人が色々なスポーツを楽しめるのに…日本人はなんて不幸なんだろう」と痛烈に感じたものです。
このドイツでの経験を礎に、Jリーグは「日本サッカーの強化」のほか、「スポーツ文化の醸成」や「スポーツ環境の充実」といった目標を掲げて誕生しました。その設立理念に基づき、「校庭の芝生化」も早い段階から訴えてきました。しかし、Jリーグのトップである私が校庭緑化を唱えているのは「サッカーのため」と思っておられる方がほとんどで、当時はなかなか理解が得られず、もどかしい思いをしていました。
子どもたちの体力不足や筋力の低下が問題になっていますが、サッカー界が芝生化を推進するのは、多くの子どもたちに外遊びができる芝生の広場を提供し、心身ともに健やかに育ってほしいから。そういう環境があってはじめて日本のスポーツが世界に伍していけるのです。
ここ4~5年でようやく誤解が解け、我々の「芝生化推進」の目的が理解されてきたのは嬉しい限りです。しかも、芝生化の機運が急速に高まり、東京都では公立小中学校の校庭の芝生化に20億円の予算を計上、芝生化やスポーツの推進をマニュフェストに掲げるケースも急増してきました。まさに、感慨ひとしおというところです。
これもひとえに日本芝草学会の皆様をはじめとする多くの関係者の努力の賜物だと思っております。
今後も、未来を担う子どもたちのために、また、高齢者の健康、そして地域社会の発展のために、微力ではありますが校庭や公共施設の緑化に力を注いでいきたいと考えております。
最後になりましたが、日本芝草学会の益々の発展を心から願い、ご挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございました。
第2回(平成21年) 日本芝生文化大賞はスポーツキャスターの栗山英樹氏に授与されました。
日本芝生文化大賞 受賞者氏名 栗山英樹氏【主な表彰理由】
栗山氏は元プロ野球選手(ヤクルトスワローズ)で、現在はスポーツキャスターとして活躍されている。また白鴎大学経営学部教授でもある。テレビやラジオへの出演、新聞への執筆などを通して日頃より芝生文化の普及に貢献されている。 さらに特筆すべきことは、北海道の栗山町に約1万坪の土地を私財を投じて購入し、地元の人たちと協力して内野も外野も天然芝の野球場を手作りで完成させ、その後の管理も仲間の協力を得ながら自ら率先して行っていることである。この野球場は「栗の樹ファーム」と名づけられ、少年野球などに先着順で貸し出されている。少年野球の大会も主催し、野球や芝生文化の普及に大変貢献されている。もろこし畑を外野のフェンスに見立てたこの野球場は日本版の「フィールド・オブ・ドリームス」とも称されている。その経緯は栗山氏本人の著書「栗の樹ファーム物語」(マキノ出版、2006年発行)に詳しく記されており、「栗の樹ファーム」のホームページでも概要を知ることができる。 http://www.sponichi.co.jp/kuriyama/ 本学会の2007年度春季大会公開シンポジウム「スポーツのある風景 -市民生活と芝生-」でも栗の樹ファームの実践ならびに芝生への思いについて講演されている。
【受賞者(栗山英樹氏)からのコメント】
日本芝生文化大賞 受賞コメント
栗山英樹
中学生の時、横田基地で野球の試合をした際、初めて体験した天然芝の球場。緑一色のその光景はまるで天国かと思えるような楽しさを感じさせてくれるものだったのです。芝の上を走ると、ふわふわと柔らかく体を包んでくれ、身体を前に押してくれる感覚を覚えました。
芝がなぜ球場に必要なのか、まさに実感した瞬間だったのです。 そんな原点から自らの楽しみで北海道・栗山町に球場造りを10年前から始めたのですが、種から育てる芝とのかかわりは本当に多くのことを学ばせてもらいました。
丁寧に手を入れ続けることの重要性。来年ではなく、2年、3年後に反応してくれる作業など、一朝一夕にはいかないのが、芝との付き合い。
ただ、どれだけ人々の身体を守り、その光景が心をなごませてくれるのか、本当にこの10年間人として大切なことを教えてもらい、感謝の気持ちで一杯です。 さらに今回は、これだけ大切なものを心にもらいながら、大賞を学会の方から頂き、これほど嬉しかったことは過去あっただろうかと思えるほどの喜びです。
何もできませんが、芝と常に格闘し、その素晴らしさだけは誰にも増して感じています。そのことを出来るだけ多くの方に伝えていきたいと思います。
この賞に恥じないようにさらに芝の心を感じられる努力を続けていきます。
今回は本当にありがとうございました。 そして、さらに頑張っていきたいと思います。